年があらたまって

 今はもう一月睦月の下旬だから、このブログの読者の皆さんも、正月気分などすっかり抜けたことであろう。こんな時期に新年の挨拶もないような気はしたが、ここまで遅くなってしまったのには訳がある。この間ブログに「晩夏の両毛紀行」と題した文章を長々と書き継いできたので、すべて書き終えてから新年の挨拶をしようと思っていたからである。途中で中断してもいいようなものだが、神経質なこの私には、そうした臨機応変の対応がなかなかできない。それに加えてもう一つ理由があった。書き終えた「晩夏の両毛紀行」を整理して、専修大学社会科学研究所の『月報』に投稿しようと思っていたからである。その締め切りが今月下旬となっており、諸般の事情から締め切り厳守との連絡をもらっていた。参与の身分で研究所に迷惑はかけられない。

 今年の三が日は冬晴れのいい天気が続き、清々しい新年を迎えることができた。元日の午後には近くの温泉にでかけてゆっくりと風呂につかり、翌2日には子供たちが遊びに来る前にセンター南からほど近いところにある正覚寺に出向いた。正月に家に閉じこもっていると、どうしても食べ過ぎ飲み過ぎとなりがちなので、ともに腹ごなしを兼ねている(笑)。正覚寺に行こうと思ったのは、もしかしたら、同じ団地に住む知り合いのEさんたちが作成した、「緑道ハレハレMAP」に影響された所為もあったかもしれない(この緑道に関しては、テレビでも紹介された)。あるいはまた、昨年は11月末まで病気の治療に専念せざるを得なかったので、年が改まったのを機に気分転換したかったためでもあろうか。

 住まいの近くには心行寺や自性院や杉山神社などもあるが、その中では正覚寺が一番好きである。菖蒲や紫陽花で知られた寺なのだが、この寺の佇まいが、いつも落ち着きを感じさせるからである。昔子供たちを連れて来たこともあるし、最近では緑道散策のついでに小僧たちと立ち寄ったこともある。正月なのでそれなりに人出はあるのだろうと思いつつ出掛けたが、予想に反して寺内に人影はまばらだった。昨年の正月は川崎大師に、一昨年は浅草に遊びに出掛けたのだが、そうした場所とは大違いである。年寄り夫婦の正月に相応しい場所とでも言えようか。

 寺の中をのんびりと散策していたら、同年配とおぼしき男性とすれ違った。私がカメラを手にしているのを見て、「撮ってあげましょうか」と声を掛けられた。こうした時には親切に甘えるのが礼儀だろうと思って何枚か撮ってもらい、ついでにあれこれと雑談を交わした。実際は彼の話を聞いていただけだったのではあるが…。こちらがいつも以上に優しい気分でいられたのは、正月の故かもしれない。二人の写真を撮ることなど滅多にないので、家人は嬉しそうだった。件の男性は、カメラが好きだと語っていただけあって、なかなかいい写真を撮ってもらった。

 私はある時以来寺社で手を合わせることはなくなった。だから賽銭も入れない。そんな人間が願い事をするわけにはいかなかろう。私はそれほど図々しくはない(笑)。竹藪の先には青空が広がっていたので、その空を見上げながら、来年もまた正覚寺に足を運びたいし、できたらもうしばらくブログを続けたいものだと、ぼんやり思った。知り合いのMさんから、男の人が書く文章はつまらないと言われたことがある。そうかもしれないとは思ったが、この年になって自分の文体をそう簡単には変えられない。これからも面白いとは言い難い文章を綴り続けるに違いなかろう。

 この正月には、年明け早々の1月4日から7日にかけて、長崎県の五島列島から島原を巡る調査旅行に出掛けてきた。専修大学の人文科学研究所が実施した調査旅行に参加させてもらったのである。長らく続いた治療をようやく終えることができたので、旅に出掛けて失いかけた自信を回復したかった。この調査旅行に関しては、そのうち「新春の五島、島原紀行」とでも題して旅日記のようなものを書こうと思っているので、老後の道楽に付き合う閑があるようならば(おそらくないではあろうがー笑)お読みいただきたい。調査旅行に出掛けて何かを書いてみる、あるいはまた、何かを書くために調査旅行に出掛けてみる、そんな行為が後期高齢者の惚け防止にはかなり有効なのではあるまいか。そんな気がしている。

 後期高齢者となったので、これを機に年賀状をやめようかとも思ったが、そうする踏ん切りが付かなかったので、暮れに40枚ほど書いた。しかしながら、もしかしたら出さないのが親切だということもあるかもしれない。これからは、徐々に少なくしていくつもりである。新年の挨拶をブログに書いて、読みたい人にはそれを読んでもらうようにするのも、妙案かもしれない。今でも、ゼミで一緒だった学生たちから年賀状が届く。この2年ほどコロナで中断しているが、OB・OG会で顔を合わせているからであろう。彼ら・彼女らとLINEでつながっているので、ここに以下のような年賀状らしきものを載せて、返事を省略させてもらった。

 明けましておめでとう!今年から宗旨替えして、このLINEにて新年の挨拶を述べさせていただきます。年賀状をいただいたゼミ生の皆さんには、これでまとめて返信しますので、何卒ご容赦下され。年を取るとだんだんずぼらになるということか(笑)。好天に恵まれた正月に、寛いだ気分で年賀状を眺めていたら、出産あり、新居の完成あり、転職あり、子育ての苦労あり、病気ありと、まさに人生いろいろ。そう言えば、喪中の葉書もありました。勝手に語れば、苦労にめげずに、前を向いて、頭をあげて、新しい年に立ち向かってほしいものです。

 ところで私の近況ですが、こちらもあれこれありました。一昨年の夏に前立腺がんの疑いありということで、MRI検査を受け、半年ほど経過を観察してきましたが、改善しないので、昨年のゴールデンウィークに入院して生体検査を受けました。その結果ガン細胞があることがわかりました。幸い今のところ他に転移はないということだったので、ホルモン剤と放射線を併用した治療を開始しましたが、2ヶ月に及んだその治療も暮れには終わり、今はこれまで通りに暮らしています。

 もうひとつの報告は、昨年結婚50年となり金婚式を家族で行いました。50年という長い歳月の間には、そう簡単には語り尽くせないあれこれのことがありましたが、二人とも元気に金婚式を迎えることができたのでほっとしています。昨年は私が後期高齢者となり、来年は家人もそうなりますので、お互いに心穏やかに暮らしたいものです。皆さんもこの一年元気で。元日に湯船につかりながら詠んだ一句、「湯煙を 切り裂く光 元日湯」。

 

PHOTO ALBUM「裸木」(2023/01/20)

正月気分を味わって(1)

 

正月気分を味わって(2)

 

正月気分を味わって(3)

 

正月気分を味わって(4)