早春の台湾紀行-旅の準備の愉しみ-

 今月の2月23日から3月1日に掛けて、台湾に出掛けることにした。初めての台湾行であり、しかも7泊8日の長丁場である。出掛けるとは言っても、一人で海外に行く気力も体力も能力もないので、専修大学の人文科学研究所が実施する総合研究調査に参加させてもらうことにしたのである。私などはつい調査旅行などと言いがちなのだが(時折は調査をも省いて旅行と言ったりもするが)、今回の総合研究調査は「台湾東部研修」と銘打たれたれっきとした学術調査旅行なのである。たんなる観光旅行ではない(笑)。

 周りの人間に、「台湾に出掛けてくる」などと言うと、必ずと言っていいほど「何しに行くんですか」と尋ねられる。観光旅行なら話は簡単なのだが、そうではないからこちらは答えに窮することになる。そして、「私は何をしに行くんだろう」と自問する羽目に陥ることになる。はっきり書けば、私の場合目的といったものは、ない。敢えて言えばセンチメンタル・ジャーニーか。旅には必ずや何らかの目的があるはずだと思うのは、もしかしたら過剰に効率化された現代社会に生きるわれわれの勝手な思い込みにすぎないのかもしれない。

 特段何の目的も持たずにふらりと旅に出掛けてみる、そんな気儘な旅があってもいいのではないか。本当の旅の醍醐味は、そんなところにあるような気もするのだが…。総合研究調査ということだから、エントリーする際には研究課題といったものを書く。研究所は大学から財政的な補助を受けているのだから、それぐらいは当然であろう。そこで私は、「日本植民地下の台湾」と書いて提出しておいた。適当に書いたと言っては語弊があるが、まあそんなところである。

 そうした形式上のことを除いて極私的に掘り下げてみると、それなりの思いはある。自信の回復や好奇心の保持や惚け防止などに加えて、ブログの材料探しや写真の撮影などが挙げられるかもしれない。昨年の正月明けには、同じ人文研の総合研究調査で五島列島と島原半島を巡ってきたが、その時は病後の治療によって失いかけた自信を回復したいとの思いが強かった。治療はその後も続いているから今回もそうした思いがなくはないが、前回と比べると大分弱くなっている。

 それに代わって新たに浮上してきたのは、好奇心の保持や惚け防止の方である。出掛ける機会があれば少々無理をしてでも出掛けてみる、そんな心掛けで暮らしているし、日常を離れてみれば、何かしら面白いことに出くわすかもしれない、そんな妄想を抱いて日々を送っているからである。惚けることを予防するためには、何時までも好奇心を抱き続けていた方がよかろうと思ってもいるので、できるだけ外出するようにしている。今回の調査旅行などは、言ってみればそのための絶好の機会だということになるだろう。

 しかも、海外に出掛けるのだから、そうとなると国内旅行とは比べものにならないほどあれこれの準備が必要となる。そして、準備すること自体が惚け防止に繋がるようにも思われるのである。何をやったのか列挙してみよう。先ずはパスポートの申請である。定年前に期限が切れていたので今回新たに取り直した。旅券番号が分かったのでこれを研究所に知らせると、しばらくして旅行会社から旅行代金の振り込みの案内が来た。そこで振り込みに銀行まで出掛けた。

 その後旅行会社からeチケットの控えが送られてきた。そこに台湾入国カードのオンライン申請のことが書かれており、ものは試しと思ってパソコンからオンライン申請してみた。次は成田までの交通手段である。あれこれ調べた結果、新横浜から直行のバスで行くことにした。朝のラッシュアワー時に荷物を持って立って行くのが嫌だったからである。バス会社が運営する「発車オ~ライネット」で予約し、クレジットカードで決済するところまでやってみた。

 ここまできてほっと一息ついた。後は細々したものである。歯磨き歯ブラシを持参せよとのことだったのでそれを購入し、ついでに貴重品だけを入れる小さなバッグも買った。最近よく忘れ物をするので、それだけは気を付けなければならない。そこまで済ませてから、本屋に出掛けて『地球の歩き方 台湾』を購入し、旅行会社から送られてきた詳しい日程表にもとづいて、旅程を再度確認してみた。地図を見ながら行き先を辿っていると、いつの間にやら旅行気分らしきものが浮かび上がってくる。

 7泊の内訳は、宜蘭(ぎらん、イーラン)に2泊、花蓮(かれん、ホワリエン)に1泊、台東(たいとう、タイトン)に2泊、屏東(へいとう、ピントン)に1泊、そして桃園(とうえん、タオユワン)に1泊である。桃園は台湾桃園国際空港があるところである。今回は台湾の東部を中心に廻るのだが、北部(台北、基隆)も南部(台南、髙雄)も中部(台中、嘉義)もまったく知らないくせに、東部になど行ってどうするのかと問われそうだが、そんなことは私にとってはどうでもいいことである。

大きな都市にはそれなりの面白さもあるはずだが、もしかしたら都会はどこも同じようなものかもしれないので、観光客が余り行かない所の方がかえって好奇心をくすぐられるかもしれない、そんな気もする。その後しばらくして、研究所から台湾映画を紹介したメモを受け取った。今回の調査旅行の案内役であるHさんが作成してくれたとのこと。たいへんよく出来た貴重な資料であった。私も映画は嫌いではないので、この資料をもとに出掛ける前にいくつか眺めてみることにした。

 これまでに観たのは、魏徳聖(ぎ・とくせい、ウェイ・ダーション)監督の三部作である『海角7号 君想う、国境の南』と『KANO』と『セデック・バレ』(第一部太陽旗、第二部虹の橋)である。続いて、酒井充子(さかい・あつこ)監督が撮った台湾ドキュメンタリー映画三部作の『台湾萬歳』と『台湾人生』と『台湾アイデンティティ』である。この辺りで時間切れとなりそうだが、もしも余裕があるようなら、女性監督傅楡(フー・ユー)の作品である『私たちの青春、台湾』や川口浩史(かわぐち・ひろふみ)監督の『トロッコ』にも手を伸ばそうかと思っている。こんなふうにして旅の準備を進めているうちに、わくわくした気分になってきた。何やら遠足前の小学生ででもあるかのようである(笑)。

 

PHOTO ALBUM「裸木」(2024/02/20

雪景色三景(1)

 

雪景色三景(2)

 

雪景色三景(3)