安倍政権とどう対峙するのか

 昨日、昔の研究会の仲間と会う機会があり、久し振りに飲み食いしながら雑談を交わした。もうみんな年なので健康談議にひとしきり花が咲いたが、それも済んで近況報告となった。正しく言えば、私が皆の近況を尋ねたのではあるが…。その場に顔を出した方は当然ながら元気なわけだから、皆さまざまなところであれこれと活躍されていた。たいへん喜ばしいことである。

 私はと言えば、飽きもせずにブログに雑文を綴っていることや、老後の「運動」不足を補うべく地元で社会「運動」に顔を出していることなどを紹介しておいた。私の耳に聞こえてくることは無かったが、まだそんなことをやっているのかと呆れられた可能性も十分にある(笑)。物好きだなあと思われたことだろう。

 私が地元で関わっている社会運動の一つが、「つながり&変えよう都筑連絡会」であり、知り合いに頼まれて現在そこの代表委員をやっている。代表委員は私だけではなく三人いるのだが、他のお二人は諸事情でどうも参加は叶わないようで、今は名前だけの存在である。この団体は、全国的に知られた市民連合の都筑区版だと思ってもらえば間違いないだろう。地元での野党共闘の推進母体である。
 
 その都筑連絡会の宣伝行動が月末の今日センター南駅前であり、その際冒頭で主催者を代表して挨拶してくれないかと、しばらく前に事務局長の前田さんから頼まれた。私はそうしたものが大の苦手である。自分が「話」の人間ではなく(座談であれば、結構好きなのだが)「文」の人間であり(もちろんながら、「雑」や「軽」や「薄」や「小」なものに限るのだが)、性分に合わないことがよく分かっているからである。

 しかしながら、「3分程度の主催者挨拶ですから」と言われたもので、そのぐらいであれば立場上仕方がないだろうと思って引き受けた。たとえ短時間であっても、何の考えもなしに話が出来るような器用な人間ではないので、事前に挨拶文を作ってみた。以下がその原稿である。ここに投稿するに当たって、少しばかり書き加えておいた。

 「つながり&変えよう都筑連絡会」の代表の一人を務めております、高橋と申します。今日これから、この場所で宣伝行動を始めるにあたりまして、一言ご挨拶させていただきます。私のような人間が、こんなところに立ってお話ししておりますのは、今の安倍政権がきわめて危険な政権であると強く感じているからであります。そしてまた、来月に行われる参議院選挙で、安倍政権に、市民の側から「ノー」の声を突きつけたいと願っているからです。

 そんなことを考えるようになりましたのは、2015年に安全保障関連法案が国会で強行採決されてからです。長らく違憲だとされてきた集団的自衛権の行使を、安倍内閣は保守の人々をも含めた多くの批判をいっさい無視して、合憲としてしまいました。その時に思ったことは、この政権はもはや保守政権などではなく、それを踏み越えたきわめて危険な強権政治の政権だということでした。

 こうした強権政治の結果として、その後、「隠蔽」やら「改竄」やら「捏造」やら「忖度」と言われるようなものが、頻発してきたのではないでしょうか。今までほとんど聞く機会がなかったような日本語です。私は一応読めることは読めますが、難しくてとても書けません(笑)。こんな言葉が急に広がってきたのは、安倍政権がさまざまな分野で無理を押し通そうとしてきたからに他なりません。

 皆さん覚えておられるでしょうか。昨年の自民党の総裁選挙の際に、安倍首相は相手候補であった石破さんから、「公正で正直、丁寧で信頼される政治」が必要だなどと言われていたのです。そんな言わずもがなのことを言われるなんて、一国の総理大臣として何とも恥ずかしいことです。安倍政権による政治の劣化がそこまですすんでしまったからなのでしょう。
 
 そのうえで、次に問題となるのは、そんな強権政治の安倍政権であれば、選挙で議席を減らしたり、支持率が低下してもおかしくはありません。しかしながら、そうはなってはおりません。いったい何故なのでしょうか。選挙で勝ったり、比較的高い支持率を維持し得ている要因はいろいろあるのでしょうが、私の見るところ大きな要因は二つあります。

 一つは、多くの市民が、安倍政権を「他の政権よりもましだ」と考えて、消極的な支持に廻っているからであります。そうなるのは、別な選択肢を思い描くことができないでいるからでしょう。そしてもう一つは、そのことの結果でもありますが、「政治など誰がやっても同じだ」と諦めて、多くの市民が選挙に行かないからです。棄権は白紙委任したことと同じです。棄権すれば、老後に2000万円不足することも、年金が今後さらに減らされ続けることも、それで構わないと言っていることと同じだということなのです。

 そんななか、ようやくにして「朗報」がもたらされました。32ある全国の一人区のすべてで、立憲野党による共闘が実現したのです。大変嬉しいことです。市民連合の要請を受けて、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の各政党が足並みを揃え、安倍政権に代わる選択肢をはっきりと示すことになったのです。これは注目すべき動きです。

 しかも、この共闘はただただ数合わせで集まっただけのものではありません。皆様にお配りしているチラシにもありますように、憲法は勿論のことですが、消費税、原発、沖縄といったわが国の直面する大事な問題で、共通政策が練り上げられているからです。自民党などは、こうした動きを「野合」など罵っているようですが、そうしたものは為にする批判に過ぎません。

 手を繋ぎ、力を合わせ、政治を変えて、希望のある社会をともに実現しましょう。一人でできなかったらみんなが、あるいはまた、一政党でできなかったら多くの政党が、力を合わせることが、絶対に必要です。そして、そこにこそ希望はあります。希望は見付けるものではなく、私たち自身が自らの手で作り出すものです。私たちもそのために力を尽くしたいと思っております。

 そんなことをお話しして、私の挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

(追 記)

 この日の宣伝行動には、立憲民主党からは参議院議員の牧山さんが(市会議員の藤井さんもいた)、共産党からは市会議員の宇佐美さんが(当選出来なかったが、市会議員候補であった井下さんもいた)、社民党からは県の政策委員長の星野さんが駆けつけてくれて、三人とも元気の出るスピーチをしてくれた。また、元自由党の衆議院議員であった日高さんは、わざわざ律儀にもメッセージを寄せてくれた。異色のところでは、川和教会の牧師さんによる沖縄の話もあった。こうした人々が顔を出してくれたのは、都筑連絡会の事務局長である前田さんが存在したからであろう。彼のネットワークを形成する力ははなかなかのものであり、素直に敬意を表したい(笑)。
 
 しばらく前の投稿に書いたことであるが、「権力の理不尽に抗うことを忘れ、無視し、冷笑して、権力におもね続ける社会は、そしてまた、権力の理不尽に抗うために手を繋ぎ合うことのできない社会は、逼塞し閉塞し萎縮した社会のままに終わるほかはない」。これは、今でも変わることのない私の信念である。unite がなければchange はない! 「つながり」「変えよう」とは、まさにそのことである。

 現在投稿している「玄界灘を渡って-2017年春、釜山、対馬、大宰府-」の続きがまだ残っているのであるが、その終了を待っていると参議院選挙後になりそうなので、あえて途中で今回の投稿を入れてみた。今日から7月、何やら暑い月になりそうな気配が漂っている。