「市民の会」のトークイベントに参加して

 1月26日の午後に、近くのセンター北駅前で「カジノの是非を決める都筑区民の会」のトークイベントがあった。私はこの会の代表の一人になっているので、冒頭で開会の挨拶をしてくれないかと頼まれた。人前で話すことなど苦手な私なので、出来れば遠慮したかったが、立場上なかなかそうもいかない。〈話すー聞く〉という関係がはっきりと成立している場所で、なおかつ自分の専門分野に関わるような話をするのであれば、何とかなりそうだが、カジノ問題といった当面する政治的なテーマで通りすがりの人向けに話すことなどは嫌なのである。

 準備しなければとても話せそうになかったので、イベントが始まる前にコーヒーショップに駆け込んで、話すべきことを思い付くまま紙にメモしてみた。たかだか3分程度の話だというのに,こんなことをしなければならないとは我ながら何とも情けない話である。急遽作成したこのメモにもとづいて、おおよそ以下のような話をした。せっかくメモまで作ったので、一つの記録として以下に紹介しておくことにした。

 このセンター北駅前でカジノ問題に関するトークイベントを開催するに当たりまして、主催者を代表し一言ご挨拶申し上げます。昨年夏に林市長は,カジノの横浜への誘致を突如表明いたしました。私はこのことを知って、驚き呆れるとともに、これは市民を愚弄するものであり、市民に対する裏切りだと感じました。何故そう思ったのかと言えば、市長はそれまで「白紙」、「白紙」と言い続けてきたからです。

 私の林市長に対する評価も一変しました。それまでは、市長は年配の女性でもあり、営業のカリスマとして鳴り物入りで市長になった方でもあり、かつまた「おもてなし」という言葉の提唱者としても知られておりましたから、まともなビジネスウーマンであり、比較的ソフトな方であり、そんなに無茶なことはしないだろうと思っていたのです。市長に対するそうした評価が一気に崩れたものですから、裏切られたと感じて怒った訳です。

 私と同じように感じた方は他にも大勢おられたようで、しばらくして「カジノの是非を決める横浜市民の会」なる組織が立ち上がりました。さまざまな政党、さまざまな団体、さまざまな個人が集まって出来たというのが画期的でした。こうした動きを受けて、この都筑区にも同じような組織が立ち上がりました。それが「カジノの是非を決める都筑区民の会」です。ここにも同じように、さまざまな政党や団体、個人が加わることになりました。
 
 市長は、カジノの誘致を正式に表明してから、市民に丁寧に説明すると言い出しました。私はそれは話が逆なのではないかと思います。決めてしまってからから説明するのではなく、決める前に市民の声を聞くべきでしょう。それが民主主義のイロハであり、基本の基のはずです。市長は議会に諮ったと居直っていますが、市長提案のカジノ誘致に賛成した議員で、昨年春の市議会議員選挙でそのこと政策に掲げた議員は一人もおりません。議会は市長の提案だからと言い、市長は議会の同意を得ているというのですが、どちらもカジノ誘致の問題で市民の意向を問うてはいません。こうしたものを馴れ合いというのではないでしょうか。

 国や市長はカジノという言葉を使いたくないようで、IR(複合型のリゾート施設)だとしきりに言っています。カジノはその中のごくごく一部の施設に過ぎないというわけです。それなら、カジノなしのIRを考えたら良さそうなものですが、それは出来ないと言う。また、IRが国家的なプロジェクトであり、重要な成長戦略であり、その収益で市の税収が増えて横浜市民の豊かな生活に貢献するといったようなようなことも語っています。

 そんなに立派なものならば、正々堂々と「私はカジノに大賛成です」と自信を持って言ったらどうなのか。しかしそうは言わない。隠そうとしているんです。何故そうなるのかと言えば、カジノがかなり怪しげなものであることをよく知っているからでしょう。ギャンブルでの掛け金の上がりを当てにしたようなものが、まっとうなビジネスモデルや成長戦略であるなるはずがありません。そこは、怪しげな人物や怪しげなお金が吸い寄せられてくる場所なのです。

 現に現職の国会議員がカジノ誘致を巡って収賄罪で逮捕されるという事態が白日の下にさらされました。カジノはギャンブルであり賭博です。そして大きな利権となっているのです。私があらためて奇異に思うのは、日頃道徳教育の必要性を声高に主張したり、「美しい日本」の伝統を称揚しているているような人々が、何故ギャンブルや賭博を平気で持ち上げているのでしょうか。実に不思議で不可解な現象です。頭が分裂しているとしか思えません。

 カジノの誘致は、横浜の将来に大きな影響を及ぼすような大問題です。そうした問題に決着を付けるのは市民の意向であるはずです。私たちは、市長と議会に市民の声を聞いてもらうために住民投票の実施を求めております。住民投票条例の制定を求めることは、何ら特別なことではなく、市民のごくごく普通の権利です。横浜の未来を決めるかもしれないような大事なことは、市民の声をきちんと聞いたうえで、落ち着いて慎重に判断してもらいたいのです。

 私たちはそのための運動を続けてまいりますが、是非皆さんにもこの運動へのご理解をいただき、積極的な参加や協力、支援をお願いしたいと思っております。本番はこれからです。誘致の撤回までともに頑張りましょう。最後にそのことを訴えて、私の挨拶とさせていただきます。

 以上が当日の私の挨拶であるが、自分の書いた文章を読み直してみると、余りにも真っ当なことを真っ当に書き過ぎている感じがして、何ともこそばゆい(笑)。自分の書くようなブログには、とても似つかわしくないと感じられるからなのだろう。年を取るとこうした羞恥心は無くなりがちであるが、年を取ってもなくしてならないものはある。肝に銘じておくことにしたい。