「住民討論集会」の開催にあたって

 皆さんお早うございます。理事長の高橋です。本日は、せっかくのお休みの日に、朝早くからペット問題に関する「住民討論集会」にご参加いただき、まことにありがとうございます。理事長としてお礼を申し上げます。

 今期の理事会では、これまでのペット問題に関する議論を踏まえ、これからのペット問題にどのように対処すべきなのかを模索してまいりました。微力ではありますが、私なりにあれこれと努力を重ねてきたつもりです。また、その過程では、たいへん厳しいご批判を受けてもまいりました。私自身も、そうしたご批判から学んだこともありましたので、やはり自由な討議というものは、物事を進めていく際にはたいへん大事なものではなかろうかと思っております。

 本日の集会でも、日頃お考えになっておられることを、どうぞご自由に述べていただきたいと思っております。そしてまた、今回の集まりが、これからのペット問題を考えるに際しまして、実りあるものとなることを願っております。そのうえでのことではありますが、集会での議論を実りあるものとするためにも、皆様方の議論が、論破や罵倒や憎悪に終わるのではなく、落ち着きのある冷静な議論となるように心掛けていただけたならば、たいへん嬉しく存じます。

 ところで、管理組合の理事長宛に、毎月『マンション管理センター通信』という雑誌が送られてまいります。その3月号をパラパラと眺めておりましたら、「ペットはマンションが抱える永遠の課題です。人によって好感度がまったく異なっており、泣き声や衛生上の問題を伴うことから、管理組合はルールを作って共同生活のよりどころとしなければなりません」とありました。まったくその通りではなかろうかと思われます。

 団地におけるこの間のペット問題をめぐる議論を振り返ってみますと、「ペットはマンションが抱える永遠の課題」であるとの指摘が、そのまま当てはまっているように思われます。よりよい解決策を見付けることが、そう簡単ではないということなのでしょう。この永遠の課題に住民がどのように向き合っていくのかが、マンションの「質」を決めると言っても言い過ぎではありません。ペット問題をめぐって、住民どうしが対立し、いがみ合い、亀裂を深めてしまってはなりません。そうならないためにも、冷静で落ち着きのある議論が必要とされているように思われます。以上のようなことを念頭に置きながら、本日の集会を進行させていただきたいと願っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上が、本日の集会の開催にあたっての理事長の挨拶のようなことになりますが、引き続きまして、この間実施されました二つのアンケート(わかりやすくお伝えするために、管理組合アンケートと追加アンケートと呼ばせていただきます)および、理事会の下におかれた略称「ペット管理委員会」の意見書から、私が読み取りました注目すべき四つの論点について、以下簡単に紹介させていただきます。しばらくお時間をいただければ幸いに存じます。

 まず第一に触れておきたいことは、 「ペット管理委員会」からは飼養者寄りのアンケートではないかとの批判があった理事会アンケートにおいても、「管理組合規約を改正して、条件を付してペットの飼養を認める」との意見に賛成した住民の方々は25.3%にとどまっているという事実です。この理事会アンケートは、回収率が62.0%という数字でしたので、データの信頼度は高いと思われますが、にもかかわらず、こうした調査結果となっているのです。ここからわかりますように、多くの住民の方々は、「共同生活の秩序維持」のために定められた管理規約第20条、およびそれにもとづいて具体化された「共同生活の秩序維持に関する細則」の改正を望んではいないということです。

 先程「ペットはマンションが抱える永遠の課題」であると述べましたが、そうした課題とならざるを得なかったのは、管理規約に違反しているにも拘わらずペットを飼養してしまった側にあることは、いまさら言うまでもありません。かく言う私も、管理規約の重要性をそれほど意識することもなくペットを飼養してしまった人間ですから、そのことの非はよくわかっておりますので、この点に関しては、この集会の場でもお詫びしておきたいと思います。おそらく、ペットの飼養者の多く方々も、同じような気持ちであろうと思います。

 次に第二に触れておきたいことは、理事会アンケートにおいて、「ペットによる迷惑行為を受けたり、不愉快な思いをされた」住民の方々が23名おられたことです。こちらは、その割合の大小で論じられるべきものではなく、その有無、あるいは絶対数こそが問題とされるべきものです。理事会アンケートの結果、こうした事実が判明したわけですから、そのことを、理事会としても、そしてまた私を含むペットの飼養者の方々も、しっかりと受け止めていただかなければなりません。
 
 もっとも、「ペットによる迷惑行為を受けたり、不愉快な思いをされた」方々の受け止め方にはかなりの幅があります。23名の方々のなかには、一方では、深刻な被害を継続的に受けている方がおられましたが、他方では、「気にはしていない」とか、「一度のみ」といった方まで含まれております。後者の意見がどうでもいいなどとは、もちろん思ってはおりませんけれども、より重要なことは、深刻な被害を受けている住民の方々に関しては、早急に対処する必要があるということです。

 途中あれこれの厳しい批判を受けましたが、理事長としては深刻な被害の緩和や解消に向けて、微力ではありますが、真剣に向き合ってきたつもりです。飼養者の方々には、今後とも被害の緩和や解消に向けて不断の努力が求められますし、理事会としても、引き続きそのための努力を継続してまいりたいと思います。

 この被害をめぐる問題に関しましては、たとえ管理規約や細則がどのようなものであったとしても、その救済を求めることができるはずのものです。憲法の第13条には、「個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重」が謳われておりますから、静かな暮らしが受忍の限度を超えて脅かされた場合には、裁判を受ける権利を行使することによって、もとの生活を回復することが可能です。こうした法的な枠組みは、管理規約や細則の如何に拘わらず、これから先も必ず維持されることになります。ペットの飼養者の方々には、そのことの重さを理解してもらわなければなりません。

 第三に触れておきたいことは、 「ペット管理委員会」の意見書でも指摘されていたところでありますが、細則は、3年間の特別措置の後も、廃止されない限りその効力が維持されるということです。細則の第5条では、「この細則の施行より一律に3年を経る年の同月末日を期限として飼養状態の継続を容認する」とされておりました。そのために、私などは、3年経過後にはペットの飼養はいっさい容認されないことになり、このままでは管理規約のみの状態に復することになるのではないかと受け止めておりました。多くの住民の方々も、そのように受け止めていたのではないかと思われます。

 そうした受け止め方だったものですから、理事会アンケートではいささか不用意ではありましたが、細則では3年後のことに関しては何も決められていないなどと書いたわけです。この点に関しましても、「ペット管理委員会」からご批判を受けました。どういうことかと言いますと、細則の第4条には、この細則は、「団地におけるペット等の飼養状態が解消し、団地環境が本来あるべき原状に復するまでの臨時措置とし、所期の目的を達成する時点で総会決議を以て廃止するものとする」と記されておりますので、細則は廃止されるまで効力を持つということなのです。「ペット管理委員会」から、理事長は細則の理解を間違えていると指摘されたのは、そのことを指しております。

 確かにそのように書かれておりますので、3年間の特別措置の効力は別として、ペットの飼養状態が解消されない限り、細則の効力は維持されるということになります。この3年間に、ペットが死亡したり、あるいはまたペットの飼養者が転居したり、さらにはペットを手放したりした方々がおられましたから、飼養されているペットの数は減少してきております。その現状に関しましては、「ペット管理委員会」の委員長の鈴木さんの方から紹介があると思います。

 減少してきていることは、「共同生活の秩序の維持」という観点から見れば望ましいことではありますが、先のような対応をすべての飼養者に求めることは難しい、というのも事実ではないでしょうか。今後とも細則をきちんと守りながら、ペットの飼養状態の解消に向けて、飼養者は勿論のこと管理組合も努力を継続していくことが肝要です。

 そして第四に触れておきたいことは、では今後ペット問題にどのように対処すべきかということです。先程管理規約の改正にまで踏み込むような意見は少数であると述べましたが、同じように、管理規約のみで対処すべきであるという意見も少数なのです。そのような意見は、理事会アンケートでも18.5%でしたし、追加アンケートでも25.8%にとどまっております。

 付されるべき条件に関しては、二つのアンケート結果を見ても、さまざまな意見があるようですが、それにも拘わらず、管理規約を維持しながら、そしてまた現在ある細則をきちんと踏まえながら、現実的に対処すべきであるというのが、多くの住民の共通した理解なのではないかと思われます。「ペットはマンションが抱える永遠の課題」だということですから、すべての住民が納得できるような「解」は難しいのであろうとは思いますが、それにも拘わらず、こうした共通理解のなかにこそ、ペット問題を解決していくことが可能となる鍵が潜んでいるように思われてなりません。

 今後理事会としては、理事会アンケートの調査結果と、追加アンケートの調査結果、それに本日の住民討論集会での議論、そしてさらには「ペット管理委員会」からの提言、この四つを踏まえて、最終的な結論を得たいと考えております。いささか長い話となりましたことをお詫びして、以上私からの冒頭の発言とさせていただきます。活発だけれども落ち着きのある冷静な討議となることを願っております。

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