あるフォーラムでの挨拶から

 私の地元都筑区には、「つながり&変えよう都筑連絡会」という名称の市民団体があって、この団体がいわゆる野党共闘の推進母体となっている。私は大分前からそこのメンバーになってはいたが、それだけではすまなくて、2年ほど前から代表委員を務めることになってしまった。私は代表になどなりたくもないし、そんな玉でもないと思っている。だったら断ればいいではないかという話だが、前代表が高齢となって辞任したこともあって、やむなく代わったというわけである。連絡会のほとんどの作業は、事務局長のMさんが事務局メンバーを率いて処理してくれるので、私などは言ってみれば挨拶要員のようなものである。お飾りだとでも言えようか(笑)。だから、いつまで経っても代表委員としての自覚が生まれてこない。困ったものである。

 挨拶を頼まれる時は、だいたい時間限定のことが多い。メインスピーカーの前座のようなことをやるわけだから、何時までもだらだらと話しているわけにはいかないのである。原稿なしで話を始めて適当な時間でうまく話が終えられれば一番いいのだが、私にはそんな芸当は出来ない。仕方がないから事前に挨拶の原稿を書き、それを時間内に終わることができるように添削している。以前は挨拶の原稿を頭に入れて手ぶらで話をしたこともあったが、最近はいちいちそんな準備をするのがいささか億劫になり、書いた物を読み上げるようになってしまった。

 今回頼まれたのは、10月末に開催された「国政・市政を考える市民フォーラム」での挨拶である。2人の講演が続くし時間が押していることもあって、挨拶は3分でお願いしたいとのMさんからの依頼だった。私などは短ければ短いほど助かると思っているような人間なので、短いことに何の異存もない。それに、参加者はゲストスピーカーの話を聞きに来ているのであって、まあ私の挨拶などに何の関心もないはずである(笑)。当然である。当日のゲストスピーカーは、青山学院大学名誉教授の羽場久美子さんと神奈川新聞社の市政担当の記者である武田晃裕さんであった。羽場さんは国際的に活躍されているようで、他にもさまざまな肩書きをお持ちだったが、私はそうしたものにほとんど関心がないのでここでは割愛しておく。

 羽場さんは「急速な軍事力強化と集団安保のさきにあるもの-市民目線で考える平和とくらし-」と題して、グローバルな視点から話をされ、武田さんは「任期半ばを迎えた山中市政-その現状と課題を考える-」と題して、かなり身近な話をされた。両者の視点は対照的であったが、ともに興味深い話であったので、長丁場となった講演会ではあったが飽きることはなかった。参加者は90名を超えたようだから、予想以上の盛況であったと言えよう。代表委員としては嬉しい限りである。事務局長のMさんもほっとされたに違いない。挨拶は以下のようなものであった。ブログに載せるに当たって、当初カットしたところを少しばかり復元しておいた。

 代表委員を務めております高橋です。今日の会を始めるに当たりまして、一言ご挨拶を述べさせていただきます。今日の会は、「国政・市政を考える市民フォーラム」ということで取り組まれているわけでありますが、フォーラムという言葉は、フォーラム・ディスカッションの略称だそうです。もともとは古代のローマに設けられた、公開の討論のための広場に由来しております。その広場に市民が集まり、自由に議論し、物事を決めていったわけですが、そうしたことが大事なことは、現在でも変わりません。それどころか、そう簡単には結論が見いだせない今日のような混迷する時代においては、ますます重要性を増しているような気もいたします。

 政治という言葉は、現代の日本では「政治的」と言うような使われ方をして、あまりいい意味には使われてはおりません。政治にあまりに関心を持つと、世間からは変わり者とみられがちです。しかしながら、私などがいまさら言うまでもないことですが、私たちの暮らし、そして私たちの人生は、政治と深く結びついております。政治を軽んずれば、政治によって苦しめられることになるのです。プライベートな世界はパブリックな世界と繋がっているのではないでしょうか。そうであれば、私たちは、もっともっと「政治的」であっていいし、あるべきだとも思われるのです。

 政治に近づくためには、世の中の動きを知らなければなりません。そして、知るためには出来上がった正しい結論を覚えるのではなく、学ばなければなりません。学ぶことは、私たちがこれまで抱いてきた思考を深めることにつながります。何故かと言いますと、それまでの単眼的な思考が徐々に複眼的な思考へと変貌していくからです。それが思考の深まりをもたらし、「問い」と言うものを生み出し、「意見」と言うものをまとめ上げるのではないでしょうか。周りに合わせるだけではないあなた自身の「意見」こそが、世の中の動きを変える力に結びついていくのです。学ぶことはそれほど大事なことなのです。

 その際に大事なことは、3つの目で世の中の動きを見ることです。一つ目は虫の目です。地上に生きる虫は身の回りのことをよく観察しております。二つ目は鳥の目です。空を舞う鳥は全体を広く眺めています。そして三つ目は魚の目です。川や海を泳ぐ魚は、水の流れをよく理解しています。この3つの目を持つことによって、世の中というものが立体的に浮かび上がってくるのではないでしょうか。ここにお集まりの多くの皆さんは、虫の目はお持ちのはずです。これから大事なものとなっていくのは、鳥の目であり、魚の目でしょう。

 今日のフォーラムには、講師として羽場さんと武田さんのお二人を、お招きいたしました。現在それぞれのポジションで活躍中のお二人の話を聞くならば、先に述べた3つの目の重要性がきっと感じ取れるはずです。お忙しい日々にもかかわらず、今日のこのささやかな市民のフーラムの講師をお引き受けいただいきましたお二人に、そしてまたこのフォーラムにわざわざ足を運んでいただきました参加者の皆様に、あらためて感謝申し上げて、開会に当たっての私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 以上が私の開会挨拶であるが、当日お二人の講師の話を聞いていて興味を抱いた箇所があった。羽場さんの話では、アジアへの大きなパワー・シフトが起こっており、その過程でアジアの急成長と対照的な日本の衰退国家化進行していること、その象徴が100円ショップなのだと指摘されていたことであり、武田さんの話では山中市長とともに中学校給食の弁当を食べたが、意外に旨かったと話しておられたことである。

 事務局長のMさんの話によると、12月にも慶應大学名誉教授の小林節さんを招いた講演会があり、そこでも始めか終わりのどちらかで一言挨拶をお願いしたいとのことだった。立場上やむを得ないのだろうとは思うが、こうなると講師の話に興味があろうがなかろうが顔だけは出さなければならなくなる。そもそも私は、講師の小林さんに一言、二言言いたいと思っているような人間である。開催場所が近くであればまだしも、ちょっと離れたところのようだから、いささか気が重い。出掛ける日までの間に愉しいであろう飲み会が4回もあるので(笑)、そこでたっぷり気分転換してから講演会に臨むことにした。

 

PHOTO ALBUM「裸木」(2023/11/27

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